ソニー ディスプレイ BRAVIA 新商品情報
周知のように、ソニーのテレビは、フラッグシップモデルにおいて、4K有機ELテレビと4K液晶テレビを用意していますが、2024年新商品も、昨年とおなじような商品展開で提案されました。今回の提案において、見えてくるものを整理しておきたいとおもいます。
まずは、新商品がどのような展開を見せているかをまとめておきます。
液晶テレビ
・XR90
・XR70
どちらも、65インチから85インチを展開します。
XR70のみ、55インチが用意されています。
両機種とも、高輝度を実現するMiniLEDが搭載されており、コンテンツ業界の制作現場で映像表現のトレンドとなっている高輝度・高色域を存分に表現いたします。制作の現場では、高輝度を実現するマスターモニターが使用されており、これと同程度の表現力をもつようです。
画像処理プロセッサー「XR」も進化を遂げています。昨年モデルよりも「緑色」の検出と、さらに「人の顔」の検出とを、強化しています。
有機ELテレビ
・A95L
・XR80
どちらも55インチから65インチを展開します。XR80のみ77インチが用意されています。
A95 Lは、昨年モデルA95Kとおなじく、QD-OLEDパネルを搭載。有機EL発光層の上に量子ドット層を配置して光の波長を変換、従来の4K有機ELテレビで採用されていたWOLEDに比べて純度の高い色(赤/青/緑)を表現します。XR80は、従来の有機ELパネルを搭載しています。
メインプロモーションとして「Cinema is coming home」というメッセージを打ち出し、映画関心層を捉えていく過程で、ソニーBRAVIAとサウンドバーを提案していきます。
ここで、これら上位機種におけるいまひとつのポイントは、昨年において最も高画質と位置付けられた、QD-OLEDパネルを搭載するA95L以外に、「マーケティングネーム」なるものを付与した点です。いわゆるニックネームみたいなものと解されます。
XR90:BRAVIA9
XR80:BRAVIA8
XR70:BRAVIA7
これに対して、A95Lには、そうした名前は付与いたしませんでした。
これは、A95Lが、BRAVIAフラッグシップモデル内において、まったく別物であることをユーザーに訴えることを示唆します。この点についての意味を、今回は追求していきたいとおもいます。
そのためにも、商品の上記概略とは別に、もうすこし、個別商品の特徴をまとめておきたいとおもいます。
- XR90(BRAVIA9)
BRAVIA9は、MiniLEDパネルを搭載した液晶モデル。昨年のX95Lよりもピーク輝度が1.5倍、バックライトの分割数は3倍と向上し、XRプロセッサーと新LEDドライバーによって、バックライトマスタードライブ機能を最大限に発揮。より明るく高コントラストを実現。音響については、壁と天井に反射させて音を届ける「ビームトゥイーター」を搭載することで、すでに定評のある音の定位感や広がり立体音響をさらに強化し、包み込まれるような立体音響を実現します。
- XR80(BRAVIA8)
BRAVIA8は、有機ELパネルを搭載したモデル。昨年のA80Lよりもピーク輝度が最大1.2倍となり、高コントラスト化を実現。
- XR70(BRAVIA7)
BRAVIA7は、MiniLEDパネルを搭載した液晶モデル。昨年は、これを搭載したモデルは一機種しかありませんでしたが、少しずつ、この裾野を広げている傾向が、ここから読み取れます。
- A95L
A95Lは、QD-OLEDパネル搭載モデル。いわゆる、量子ドット有機ELパネルを使用したモデルです。従来の有機ELパネルは白色発光を用いるのですが、QD-OLEDは、純粋に、青・赤・緑発光をベースに映像表現していきます。
昨年モデルと比較して、ピーク輝度が最大2倍向上し、より明るく鮮やかな表現を実現しています。
- 総評
総じて、全体的にマイナーチェンジであることは否めません。現在、コンテンツ業界において注力される「輝度」、これをさらに引き立たせるよう、従来技術の延長に強化を図った点、しかも、それらが中心的な訴求項目となっている点から、伺うことができます。
ただ、一方で、MiniLEDモデルを強化していこうとする方向性が伺えます。昨年まで液晶テレビの最上位機種にのみ搭載された技術が、上位2機種にまで拡張されてきているからです。
ここで、当初の問題設定にもどりたいとおもいます。
なぜ、A95Lには、マーケティングネームが付与されなかったのか。
おそらく、QD-OLEDの技術差別性が有意に存在しているからだ、と考えます。昨年に注目されたQD-OLEDパネルが表現する画像表現の美しさには、従来有機ELパネル、MiniLEDパネルでさえ、2024年に入っても届き得なかった、ということです。
その点からすると、こうしたマーケティングネームの付与は、ソニーはソニー内部で、QD-OLEDパネル vs BRAVIAという構図を創りだし、ボリューム競争においてQD-OLEDに打ち勝とうとしているのではないか、という仮説も立てられるということです。
また、これらのパネル技術については、サムソンやLGの競争過程が存在していることを忘れてはなりません。QD-OLED技術はサムソンが展開する技術でもあり、そこから供給を受けています。これら2社の競争軸の移り変わりが、日本メーカーのテレビのパネル技術の行方を決める、ということは、現在のところほぼ確定的事実ということでもあるからです。
これら周辺事項も含めて、ソニー、そして日本企業の、パネル業界における試行錯誤の過程を見てとることができる、というまとめでこの記事はおしまいにしたいと思います。